〜イントロダクション


■オリジナル・メンバー 3人の死去■

早いもので特別企画『ネイティブ・サン』をネット上に公開したのが2004年の春頃、それからまた幾つかの日々が流れた。その間、我がネイティブ・サンにも様々な出来事があった。

一番の”事件”はネイティブ・サンの実質的なリーダーでもあった本田 竹広の死だろう。これによってネイティブ・サンというバンドは永遠にその活動に幕を閉じる事になった。
周囲の関係者、ファンもそうだったと思うが、あの本田さんが突然、何の前触れもなく、いきなりお亡くなりになるとは予想もしなかった。

私も本田さんの存命中は1年か2年毎には開かれるであろうネイティブ・サンの復活ライブを、あと何回かは楽しめるものとばかり思っていたし、その間に特別企画『ネイティブ・サン』も何か新しい情報があれば更新出来るかも知れないとさえ考えていた。
確かに本田 竹広に残された時間はそう多くはないという事を多くのファン同様、薄々は感じていたものの、いざ「その時」が来たと知らされると、ただただ呆然とするしかない。やはり人の運命というのは分からないものだ。

訃報はまだ続く。本田 竹広に続いて、今度はネイティブ・サン発足から解散まで本田さんと行を共にしたギタリスト大出 元信が2008年に鬼籍に入る。
ベースの川端 民生は既に亡く、本田 竹広、大出 元信も亡くなって、ネイティブ・サンのオリジナル・メンバーは遂にサックスの峰 厚介、ドラムスの村上 寛しかいなくなったというこの事実に、歳月の流れの早さを感じざるを得ない。

2004年に特別企画『ネイティブ・サン』を公開した直後は「今後、ネイティブ・サンについて何か書くのはもう止めよう」と思っていた。このバンドについて書く事がまったくなくなったわけではないが、既に解散して終結してしまったバンドの事をあれこれ書くのはノスタルジー以外の何ものでもないし、意味がないように思えたのだ。

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■ザ・ピュアとネイティブ・サン■


あれは2004年の夏の終わりの頃だったか。
本田 竹広と会って、いろいろ話をする機会があった。その時、本田さんは当時一番精力を傾けていた自分のバンド「ザ・ピュア」について、熱っぽく語り始めた。「ネイティブ・サンはもう終わったバンドだから、俺はこれからはピュアで一旗上げたい。ピュアも音が固まってきてどんどん良い感じになってる。これからが楽しみだよ」
その話を聞きながら「もしかしたら本田さんはネイティブ・サンのサイトよりも、ザ・ピュアのサイトを誰かに作ってほしいのではないか」と思った。

本田さんは、筆者が作ったネイティブ・サンのサイトには一度も眼を通さなかった筈だ。それは自信を持って言える。インターネットとはまったく無縁の本田さんは自分のオフィシャル・サイトさえ満足に閲覧しなかった人でもある。
だからザ・ピュアの事を熱心に話す本田さんの姿を見て私は複雑な気持ちになったのを覚えている。

本田さんと別れてから「ピュアのサイトか。。。」と私は呟いた。
だが現実的に私にザ・ピュアのサイトを作るのはかなり困難な事のように思えた。地方に住む筆者にはピュアの活動をつぶさに取材するのは不可能だったし、それ以前にピュアはバンドとしてはまだまだ発展途上の段階であり、特別企画としてサイトを制作するのはまだ時期早々と考えたからだ。

そして本田 竹広の訃報が届く。私はしばらく振りに特別企画『ネイティブ・サン』を読み直した。
例のガチャ文・駄文の連続で、自分の書いたものながら気が滅入ってしまったが、一方で「ネイティブ・サンについて、まだ書き足りない部分があるのではないか」という気持ちが沸々と込み上げてきた。これは自分でも意外な感情だった。
「ネイティブ・サンに関しては、もう何か書くことは止めよう」とさえ一度は思った程なのに、いざ本田 竹広が亡くなったという事実を前にすると、ネイティブ・サンというバンドが今までとは違う一面を見せ始めていたのだった。

私は特別企画『ネイティブ・サン』の続編であるVer2.0の制作に着手した。
ザ・ピュアではなく、既に完結してしまったバンドについて私が新たに何か書くというのは、天国の本田さんにとっては極めて不本意な事かも知れない。
だがネイティブ・サンもザ・ピュアも、本田 竹広が心血注いで結成したバンドである事には変わりはないし、また大出 元信が亡くなり、結成時のオリジナル・メンバーである峰 厚介のサイト管理人を筆者が担当しているという事実に、やはりこのネイティブ・サンというバンドには、何かの因縁を感じざるを得ないのである。


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そして、ネイティブ・サン Ver2.0へ■

『ネイティブ・サン Ver2.0』は、『ネイティブ・サン Ver1.0』の続編だが改定版、補強版ではない。筆者としては新たな気持ちでVer2.0を書いたつもりである。
そのため、Ver2.0ではVer1.0では触れられていないネイティブ・サンというバンドの本質的な魅力と、このバンドの特異性について書いた「検証:Native Son」を中心に編んでいる。またこれに合わせVer1.0の方も、特別企画の柱である「Native Sonの活動」(1〜3)を始め各項目共々、無駄と思える文章はカットし書き直しを施した。
本田 竹広死後のエピソードも新たに加えて、筆者としてはVer1.0、Ver2.0併せてひとつの読み物となるように配慮した作りを心掛けたつもりだ。

そして、この特集を読んでネイティブ・サンと共に青春を過ごした方に、"あの時代の気分"を思い起こしてほしいという事、また若い方に昔ネイティブ・サンというイカしたバンドがあったということを知ってほしいと強く思う筆者の気持ちは、このVer2.0でも変わる事はない。

これをお読みになって「さて、それではネイティブ・サンとやらのバンド、ひとつアルバムでも聴いてみようか」という気持ちになられる方がいたら、筆者としては、これ以上の喜びはない。


                       以下、〜検証:ネイティブ・サン(1)〜へ続く