〜ネイティブ・サン 最後のステージ(3)〜



■ネイティブ・サンのライブ・レコーディング作品、その呪われた運命とは■

ネイティブ・サンのアルバム郡を、いま再びひも解き眺めてみれば、ひとつの思いに行き着く。
それは、ちょっと大袈裟にいえば「ネイティブ・サンというバンドにおける、ライブ・レコーディング作品の呪われた運命」ともいうべきものだ。
形として残っているネイティブ・サンのライブ作品はアルバムの『COAST TO COAST〜native son live in USA』、『CARNIVAL〜Live at Montreux』、そしてDVDの『CROSSOVER JAPAN'05』の3作品しかない。
初期に発売された2枚組の『COAST TO COAST〜native son live in USA』に関しては100歩譲って、なんとか許そう。しかし『CARNIVAL〜Live at Montreux』、そしてDVDの『CROSSOVER JAPAN'05』に収録されている演奏内容には、どうしても不満が残ってしまう。この2作品を聴いて「ああ、ネイティブ・サンは、いつもこんなライブをやっていたのか」と思ってしまうリスナーがいたとしたら、とても残念に思う。

本企画で繰り返し書いていることだが、ネイティブ・サンはライブでこそ本領を発揮する。それは−これも何度も書いてきたことではあるが−、メンバーが基本的にジャズ・ミュージシャンだからであり、アルバムに収められた曲とは毎回違ったアプローチを施しながら、サウンドをどんどん展開させていくタイプのバンドだったからだ。
ライブだから当然、その日のミュージシャンの気分や会場の雰囲気によって演奏の好不調はあるだろう。それが良質なライブ作品を制作する難しさでもあるのだが、残念ながら『CARNIVAL〜Live at Montreux』、『CROSSOVER JAPAN'05』の2作品は、ネイティブ・サンの最高水準の演奏が収録されているとは、どうしても言い難い。

バンドのエナジーが最高潮に達したときの、ネイティブ・サンのライブ・パフォーマンスの凄さというものは、やはりその場で体験した者でないとなかなか伝わらない−というジレンマが悔しい。

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■ハコの問題■

『CARNIVAL〜Live at Montreux』と『CROSSOVER JAPAN'05』が、結果的に残念な内容となっているのはバンドの好不調よりも、むしろ会場の問題かも知れない。
『CARNIVAL〜Live at Montreux』はタイトル通り、スイスのモントルー・ジャズ・フェスティバルがメイン・ステージであり、『CROSSOVER JAPAN'05』は国立代々木競技場第一体育館に設けられた特設ステージが会場となっている。こうした大きな会場はネイティブ・サンにとっては、むしろデメリットの方が大きい。余りにもハコが大き過ぎるのだ。
会場が大きいことで演奏はそれなりにまとまりやすくはなるものの、その分音楽は定型化し、メンバーのプレイも「小粒」となってしまう。「ライブハウスという狭いハコ」で誕生したネイティブ・サンが、こうした場所で最高の演奏を引き出すとは到底思えない。

逆に初期の『COAST TO COAST〜native son live in USA』が成功しているのは、ニューヨークの「Seventh Avenue South」や、ロスアンゼルスの「The Baked Potato」といった「ライブハウスという狭いハコ」だったからに他ならない。

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■バンドの主戦場はライブハウス■

ともあれ、結成から解散までライブが主戦場だったネイティブ・サンは、『COAST TO COAST〜native son live in USA』以上のライブ作品を、遂に形として残すことのないまま終わった。筆者が冒頭に「ネイティブ・サンのライブ・レコーディング作品、その呪われた運命」と大袈裟に書いたのも、そんな意味合いからだ。
そして、それはネイティブ・サンにとっても、またリスナーにとっても不幸なことだったといって良いように思う。

だが、まあこの件については、今となってはどうにもならないことではある。いくら嘆いても始まらない。
そこで、ここはひとつ、前向きに考えてみよう。
もし自分がネイティブ・サンのアルバム・プロデューサーだったら、どんな内容のライブ作品を制作するか−今となっては夢物語だが、想像するだけなら誰にも迷惑は掛からないし、罪もないだろう。

そこで次ページの章では筆者が考えた、ネイティブ・サンのライブ・レコーディング作品を披露してみたい。
あくまでお遊びだが、読者の皆様には、ぜひお付き合いを願いたいと思う。



 以下、〜ネイティブ・サン 最後のステージ(4)〜へ続く