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ケイ 赤城 インタビュー 〜幼少篇〜


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私の幼少の頃ですか? 母の話によると、とてもおとなしい静かな赤ちゃんだったと聞いています。でも幼稚園児の頃になると結構、おっちょこちょいで腕白な子供でしたね。

父はキリスト教の牧師ですから、とても忙しい方でした。たとえば信者の方のお宅で今病気で死にかけているという風な事があれば、もう朝早くでも夜遅くでも出かけて行って励ましたり慰めたりしなければならないわけです。

他にも様々な方たちの悩み事・相談事を聞いてあげたりと、とにかく絶えず人のために牧師としての役割を果たすという感じでした。まさに”心のドクター”ですよね。
ええ、もちろん今でも私は父を大変尊敬しております。

そういった父の姿を小さい頃から見ていたせいでしょうか。
たとえば私は現在、ロスで音楽の講師をしておりますが、若い生徒さんから「プロのミュージシャンになるべきかどうか」といった相談事をよく受けます。

そういう時に私が何と答えるかと言いますと、「プロフェッショナルなミュージシャンになるという事は、ただ仕事として音楽を選ぶということではない。それは人生そのものの生き方の選択である。それはキリスト教の牧師になったり仏教のお坊さんになったりするのと、まったく同じ事なんだよ」と言うわけです。

これは結局どういうことかと申しますと、「プロのミュージシャンになるということは、自分を捨ててもっと自分よりも遙かに大きな世界に尽くす、それに身を捧げるということなんだ」ということなんです。そういう気持ちを持たなければ、プロとしての音楽活動は出来ない、と私は考えています。
そういう風に「他の世界に自分を捧げる」という考えは、小さい頃からそういった牧師である父の姿を見てきたからなんじゃないかな、と思いますね。

若い頃はミュージシャンというのは、全部自分のために音楽をやるわけですよ。「有名になりたい」とか、「お金持ちになりたい」とか、「自分がいかに巧いかということを他人に見せつけたい」とかね。
でもね、不思議なもので長続きするミュージシャンというのは、いずれはそういった野心からは離れていきますね、私の経験だと。

そういう風に「自分のために」という考えは、いずれは行き詰まってしまうんです。そうじゃなくて音楽のため、という風に考えを超越していかないと、まずはっきり言って続きませんし、音楽も伸びていかなんですよね。

たとえばマイルス・デイビス、彼はものすごいエゴイストですよ。でもね、音楽に関してはそういったエゴはきれいさっぱりなくなってしまうんです。つまり人間的なエゴイストと、音楽的なエゴイストというのは違うんです。これは彼と出会ってはっきり違う、と分かりました。

マイルスっていう人はね、もう音楽の事になると音楽しかないんです。自分を格好良く見せるとか、そういうことは全然考えていない。
つまり音楽が何を必要としているか、ということを熟知している。

マイルスという人は、僕は決して破滅型の人だとは思わない。だたし、彼はひとつのところに安住するというのが絶対嫌いな人間ですね。これは音楽だけの事ではないですが、とにかく自分が飽きてしまったら、もう駄目なんです、あの人は。
それに飽きたと思ったら、次に進むんです。だからそういう考えは僕ら他のメンバーに対しても、絶えず求めました。

私が幼少の頃っていうのは、父の仕事の関係もあって家族はアメリカに住んでいました。
うちのお袋は素晴らしい声を持ってまして、ピアノを弾いていました。そしてうちの父も素晴らしい声を持っていて、よく教会でオルガンを弾いてました。
そう、音楽が身近にあるような環境でした。そういう家族の方針で私の姉も私もピアノを稽古させられたんですね。(注:ケイ 赤城氏のお姉さまは、現代音楽のプロ・ピアニストとして活躍中) 
それで私も、最初は嫌々ながらやり始たんですよ。(笑)

12才の時に家族はアメリカから日本に帰ってきたんですけど、私はその時に日本語は話せなかったし、もちろん読み書きも全然出来ませんでした。それで中学校の先生たちに支えられて、2年半くらいで何とか一通り、日本語が出来るようになりましたが、その間はもちろんピアノを勉強する余裕など、全然ありませんでした。

それである程度、日本語が出来るようになった頃、自然にまたピアノの前に座るようになったんです。映画音楽とかビートルズの曲を弾いていたのを覚えています。
嫌々ながら始めたピアノですが、今から考えると本質的に私はピアノを弾くというのが好きだったんですね。でもその頃は「将来プロのミュージシャンになる」ということは、まったく考えていませんでした。

(以下、ケイ 赤城インタビュー 〜 青春篇に続く)