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ケイ 赤城 インタビュー 〜マイルス・デイヴィス バンド(2)篇〜


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マイルスからは様々な事を学びましたが、自分はこれまでサイドメンとして活動するのが多かったせいもあって特にバンド・リーダーとしてのマイルスから多くの事を勉強しました。優れたバンド・リーダーというのは、まずサイドメンを信頼しきるということです。
サイドメンに対して「ああしろ、こうしろ」と指図するリーダーというのは最終的には、そのミュージシャンの音楽性を延ばしていくことが出来ないんじゃないか、と思うんです。マイルスはそうではなかったですね。(きっぱりと)

マイルスが素晴らしいのはね、取りあえず大きな枠を決めるんです。そしてその中でミュージシャンというのは、どんどん自分を発見していくのです。
またサイドメンがどういう風に音楽を解釈していくかによって、マイルス自身も彼の音楽もどんどん変わっていきました。これはサイドメンを信頼しきっていなければ出来ない事ですよね。良い意味での放任主義と言いますか...。
マイルスという人はそこをよく理解していた人でした。
ですから自分もリーダーとなった時にはマイルスのようにあるべきだ、と思ったものです。

結局、音楽というものはリーダーがやっていくものではないんです。音楽というのはたとえばトリオであれカルテットであれ、全員で作っていくものなのです。逆に言えば信頼しきれないサイドメンは最初から雇わなければ良い、ということになります。

雇った以上はその人が持っている感性やその人独自の解釈といったものを充分に尊重した上で、一緒に音楽を作っていく。しかし大きな枠・指針みたいなものはリーダー自身が決める、それが本当のバンド・リーダーの仕事なんじゃないかと思います。

マイルスは本当に心の優しい人でした。ただしジャズ・ミュージシャンですから普通の一般的な生活はしていないわけで、5才のわがままなお坊っちゃんがそのまま大人になったという感じの人ですね。物事に対しても凄く敏感ですし。

でもね、凄く怖い人でしたよ。いつ怒られるのかとメンバーはビクビクしてました。
音楽的じゃない演奏の仕方、あるいはただありきたりの演奏の仕方、誰でも出来るような音楽の仕方、そういうものに彼は耐えられない。

サイドメンに対しても常にバンドの音楽に自分自身の個性や感性を反映させる、ということを求めました。たとえばマイルス・バンドに入ったら、前任者のスタイルをただ単に踏襲するというのはいけないんです。
前にいた人の演奏を踏まえながらも自分のテイストをそこに持ち込まないと、マイルスはとても怒りますから。怖い人というのは、そういう意味です。

(以下、ケイ 赤城インタビュー 〜 マイルス・デイビス バンド篇 その[3] に続く)